ライブレポート plentyワンマンツアー「life」@ZeppTokyo

f:id:draiko_tops:20161120164111j:plain

2017年11月3日、文化の日Zepp Tokyoで行われたplentyワンマンツアー「life」。plentyのライブを観るのは、あの野音以来ちょうど1年ぶりだ。

www.centerofongaku.com

「いのちのかたち」をリリースし、次のステージへと歩みを進めたplenty。その彼らが発表した新作「life」を携えて行われる今回のツアー。そしてこの東京公演では、cinema staffの辻友貴がゲストとして登場する。1年ぶりの見せるplentyがどんなステージを披露するのか楽しみに、私は舞台となるZeppTokyoへと足を運んだ。

「生きる」意味をステージで体現してみせた4人のplenty

おなじみとなったImogen Heapの「Hide And Seek」が流れる中、暗闇から4人が姿を現す。静寂が包まれる中、ライブはニューアルバム「life」のファーストナンバー『夜間飛行』からスタートした。

ライブが始まってすぐに気付く。オーラとスケール感が一段と増していることに。それはcinema staffの辻をゲストに招いての4人体制だからという話ではない。大きな進化を遂げたバンドアンサンブルと彼らの放つ圧倒的な存在感。知らぬ間に次のフェーズへ進んでいった彼らを身を持って体感し、私の心は強く揺さぶられた。

『プレイヤー』のアレンジと演出は非常に印象的だった。ギター1本で歌い上げる江沼に続き、ドラム中村一太、ベース新田紀彰と次々にスポットライトが当たり、それぞれの音が綺麗に重なってゆく。徐々に奥行きは増し、最後に辻を加えた4人が深淵で壮大な世界観を紡ぎ出す。フロアはあっという間に彼らの世界へと染まっていった。

 

「こんばんわplentyでーす」「楽しんでってくださいー」。江沼の短くも暖かな始まりの挨拶が終わり、『誰も知らない』『born tonight』『嘘さえもつけない距離で』『laugh』と、ニューアルバム「life」から4曲が立て続けにドロップされた。細微で表情豊かなバンドアンサンブルが、ここからさらに輝きを解き放つ。中村の多彩でテクニカルなドラミングに、グルーヴィーに刻まれる新田の色気あるベースライン。辻のアグレッシブなギターサウンドに触発されるように、江沼のギターがうなりを上げる。

辻がplentyに与えるエネルギーは計り知れないものがあった。ダイナミックかつパワフルなギタープレイと、『born tonight』など要所要所で魅せた熱量の高いパフォーマンスはplentyへ効果的なアクセントをもたらしていた。

4人で送る『嘘さえつけない距離』はまさに圧巻の一言。4人の背後に映し出される穏やかな青空と雲、そして濃厚で重厚なアンサンブルをバックに、江沼の淀みのない真っ直ぐな美声が天空まで伸びて行く。映画のエンディングを飾るにふさわしい、壮大でドラマティックに展開していくこの曲の圧倒的な存在感に、大きな感動と衝撃を覚える。あまりの迫力に身体は震えていた。

続く『laugh』では、江沼のアコースティックギターを筆頭とした穏やかな優しいバンドサウンドが温かな愛の結晶となり、会場を包み込む。ここにいる全ての人を抱きしめるように。メンバーと観客を客観的に眺めながら、優しく微笑む新田の笑顔がとても印象的だった。私は最後列から見ていたのでお客さんの顔は見えない。しかし、それでも後ろ姿を見ただけで、皆が暖かな気持ちに包まれているのだとわかり、私の心は幸福で満たされた。

 

「改めてこんばんわplentyです」と、愛くるしい声で挨拶をする江沼。ここで一旦メンバー紹介のコーナーに。まずはこのライブで重要な役割を担うことになるゲストcinema staffの辻友貴が紹介された。そして次にドラム中村一太がコールされる。観客に向けて手を振る中村。あれには失神しそうになった人が何人かいたはず。

そして最後にplentyの生みの親の番が回ってくる。

「ベース!にっち!」。

ベース新田紀彰の紹介が雑すぎて思わず笑ってしまった。

 

次の曲へいくと思いきや、何やら辻に話しかける江沼。すると、辻は今回ワンマンツアーに呼んでもらった感謝をplentyのメンバーと観客に告げる。ニコニコ嬉しそうな江沼。仲良しか。こちらまで笑顔になってしまう微笑ましい光景だ。

「のびのびと楽しんでくださいねー」。その江沼の一言に癒されながら、再び彼らのパフォーマンスに私は集中した。

 

そんな仲の良さそうな、いや、仲の良い江沼と辻が二人向き合って弾き始めた『心には風が吹き 新しい朝を見たんだ』。二本のギターサウンドが互いを補完するように仲良く歩調を合わせる。活き活きした音たちが心地よく体内に侵入してくる。江沼のアコギと辻のギターが織りなすメロディラインが光る1曲だった。

 

中盤からは、さらにplentyワールド全開でライブが進んでいく。磨きがかかったのは表現力だけではない。演出力もそうだ。今回のツアーでは、照明やプロジェクターから映し出される映像といったステージ演出に工夫が凝らされていて、plentyの描き出す細やかな情景や心情を全身で体感できるライブとなっていた。ライブパフォーマンスだけでなく、空間のあらゆる場所をフル活用することで、お客さんにplentyの全てを感じてもらう。彼らのライブプロデュース能力が大きくジャンプアップしていることを、こんな所でも感じ取れた。

 

「人間という存在」や「人間の抱える孤独と闇」、「生きることの意味」を切実に歌うplentyのメッセージ性の強い楽曲とライブ演出、そして高い濃度を誇るライブパフォーマンスで、彼らが訴えたい想いが確実にオーディエンスの心に突き刺さっていく。

中村のストロングなドラムソロから、3人が中村のもとへ集まり始まった『劣勢』では、辻の情熱的で狂気を感じさせるギタープレイが牙をむく。立て続けにアルバム「this」から『或る話』がドロップされた。真っ赤に燃える照明をバックに中村の力強いドラムが暴れ狂う。新田とのリズム隊が躍動し、フロア全体を大きく揺らす。余韻残る中で披露された『さよならより優しい言葉』では、知らない間にplentyの世界に吸い込まれていった人々が、江沼の「ワァーワァー」に合わせてハンズアップで呼応し、大きなグルーヴが空間を埋め尽くす。

 

江沼のエコーに合わせて渦を巻く映像と、ドラマティックに展開される心情描写が印象的な『high&low』、幾何学的な背景と変則的なリズムで繰り出されるダンサンブルな『ワンルームダンサー』といったナンバーを次々に披露。エッジの効いたフレーズとメロディで内面に潜む人間のリアルな心情を描き出し、観客の心に訴えかける。

『in silence』の前半部分ではわざと原曲よりテンポを落とし、孤独な悲壮感をより強くさせていく。大サビでは稲光のように照明が激しく点滅し、暴れ狂う感情が一気に爆発する。そして、ラストにささやかな願いを言葉に込める。

 

「それでも生きてみたいよ。明日もあさっても」。

 

高度な表現力を持って、僕らの想いを代弁するplenty。

 

「孤独は時が忘れさせてくれる。そう。喜びはいつか訪れるのだ」。『よろこびの吟』で僕らに語り掛ける。『in silence』と同様にBPMを落とし、今度は幸福感を増幅させる。江沼が1つ1つの言葉に想いを乗せ、Zeppに広がるよろこびの吟。映像に映し出される深い海の底。水面からは輝く光が差し込んでくる。その光は次第に大きくなっていく。伸びやかで素直な優しい江沼の歌声は、水面から差し込んでくる光のようだった。孤独から救う希望の光だ。

光の先で待ち受けるように流れ始めた『愛のかたち』。孤独も悲しみも喜びも怒りも全て知っているplentyが放つ究極の愛のうた。辻が加わった4人の緻密で懐の大きな音像が会場全体を彩っていく。

時間はあっという間に過ぎ、やってきた本編ラストの時。最後のチョイスされたのはスケール感の大きなplentyの誇る名曲『傾いた空』だ。良質な4人のバンドアンサンブルに江沼の誇り高き美しい叫びが加わり、フロアに大きなグルーヴが生まれる。

この光景を見て、私はあの日のことが頭に浮かんできた。それは2年前のこと。埼玉で開催されたロックフェス「ビバラロック」で、plentyはサポートの2人を加えた4人体制での最後のライブを行った。そこでラストにドロップされた曲がこの『傾いた空』だ。あれは間違いなく史上最高の『傾いた空』だった。

その思い出が一瞬にして蘇った。あの日以来に見る4人の傾いた空。一段と大きく成長を果たした彼らは、あの日の記憶を塗り替えるような圧巻のステージパフォーマンスを見せつけてくれた。

 

そしてアンコール。お客さんの暖かな手拍子に応えて、再び辻を加えた4人のplentyがステージに登場。「あざーす!」と江沼が無邪気に観客へ感謝の言葉を表す。

沈黙の中、辻が話を切り出す。

「すごい緊張感だね」。

6年前、一緒に周った列伝ツアーの思い出話をしながら「またやれて俺はうれしいよ」と感謝の言葉を述べる辻。ニコニコしながらそれを聞く3人。アンコール前のMCをゲストに任せるplenty。普通のアーティストだったら、こんなことありえないかもしれない。しかし、このスタイルがplentyなのだ。これこそplentyなのだ。彼らが醸し出す独特の雰囲気に飲み込まれ、気付けば虜になっていたというファンも少なくないだろう。ホントつくづく不思議なバンドだ。

 

「life」のラストナンバー『風をめざして』で幕を開けたアンコールは、ロックバンドとして圧倒的な力を示すこれまた凄まじいパフォーマンスだった。

多彩なアレンジで高度な芸術性を発揮した『ETERNAL』は非常に素晴らしかった。ライブではグローブ座で行われたストリングスバージョンしか聴いたことがなかったが、改めてこの曲の秘めている強大なポテンシャルの高さを感じた。

「まだまだここからだ!」と言わんばかりに、『枠』『最近どうなの?』『待ち合わせの途中』と名曲の数々で一気に畳みかけ、フロアを興奮の渦に巻き込む。観客も手を挙げたり、思いっきり体を揺らしながら、熱量の高いパフォーマンスに精一杯応える。ライブはアーティストとオーディエンスで作り上げる共同作業である。plentyとお客さんの信頼関係はどんな時でも抜群だ。まさに「あうんの呼吸」ってやつ。ライブでしか体感できないこの感覚をしっかりと、じっくりと噛みしめる。

個人的には『最近どうなの?』がめちゃくちゃ良かった。イントロのギターフレーズが流れた瞬間、失神しそうになった。『枠』の熱狂が収まらぬ後にこの曲は心臓に悪い。最高だ。アウトロで繰り返される江沼の「おっおっおー」の叫びに合わせて、心の中で力いっぱい大きく叫んだ。

お台場で開かれた極上のplentyショーは、ついに最後の時がやってくる。ラストを飾ったのは『蒼き日々』。「朝が来るまでは僕だけが正義」。強くたくましい江沼の言葉とplentyの生命力みなぎる音像が心に深く突き刺さる。「色々あるからもしれねーけど、俺らはここにいつでもいるから頑張ってこい」。そんな不器用だが最高に心強いエールで背中を強く押された気がした。

江沼が3回繰り返した「じゃあね。またね。」の言葉が強く胸に残る。あれは『さよならより優しい言葉』でも言ってる言葉だ。楽しい日々はあっという間に過ぎていく。しかし、つらい時も悲しい時もどんなに時間がかかろうといつかは過ぎていく。そして、必ずや訪れる喜びの瞬間。文字通り「さよならより優しい言葉」を何度も繰り返し、江沼そして4人のplentyはステージに別れを告げた。

 

本当に素晴らしいライブだった。中村と新田のリズム隊は力強さとキレが強化され、さらに進化を遂げていたし、辻の活躍も目覚ましいものがあった。アグレッシブで確かなギターがplentyのサウンドに彩りを加え、彼らの世界観がよりリアルに抽出されていた。

そしてフロントマン江沼郁弥。何度も頭を振りながらギターをかき鳴らす姿が印象的だった。その姿はまさにロックンローラー。体全身で音楽を表現する彼にロック魂みたいなものを強く感じた。胸をキュッと締め付けられそうになるほどの美しい歌声は前にも増して精度が上がっていたし、すごく大人の色気みたいなオーラを感じた。

plentyのライブに派手さはない。オーディエンスがフィジカルに盛り上がるわけでもない。しかし、確かな意志と信頼がここにはある。静かではあるが、激しく燃ゆるロックの魂がそこには存在していた。

 

このライブを通して、plentyから「生きること」の意味みたいなものを教わった気がする。生きていると、様々な感情が生まれる。喜びや悲しみ、寂しさや優しさ。楽しい時もあれば、孤独に襲われる時もある。うっとおしく思う感情だってある。

だけど無駄な感情なんて1つもない。色んな感情に出会う事。それが「生きる」ことなのだ。plentyからもらった大切なメッセージを胸に、私はこれからも頑張って生きようと思う。

 

12月18日にcinema staffとの2マンが開催されることがこの日発表となった。タイトルは「辻との距離のはかりかた」。辻とplentyは12月、再び顔を合わせる。キャパ300人という新代田FEVERでどんなパフォーマンスをお互いに交し合うのか。今から楽しみで仕方がない。

 

plentyワンマンツアー「life」@ZeppTokyo セットリスト

1.夜間飛行

2.星になって

3.プレイヤー

4.誰も知らない

5.born tonight

6.嘘さえもつけない距離で

7.laugh

8.心には風が吹き 新しい朝をみたんだ

9.こころにままに

10.独りのときのために

11.劣勢

12.或る話

13.さよならより、優しいことば

14.high&low

15.ワンルームダンサー

16.in silence

17.よろこびの吟

18.愛のかたち

19.傾いた空

 

アンコール

20.風をめざして

21.ETERNAL

22.待ち合わせの途中

23.枠

24.最近どうなの?

25.蒼き日々